解像度向上日記

生活と文章に対する解像度を上げていくためのブログ

ラバト到着

 10月末までモロッコに滞在することになったので、今日から現地での暮らしについて書いていこうと思う。

 

 昨日はパリ経由でラバト=サレ空港に到着し、ホテルにチェックインした。……と書いてしまえばそれだけだが、空港に着いてからがかなり大変だった。

 8月22日と23日はモロッコの犠牲祭(イード・アル=アドハー、イスラーム圏の祝祭で、羊などの獣が神に捧げられる)で多くの人が都市から田舎へ帰っており、昨日の24日も都市部は閑散としている。そのこと自体は日本にいる時からわかっていたので、ホテルを予約する時点で到着予定時刻を?伝えて空港まで迎えに来てもらうよう頼んでいた。「タクシーで迎えに行く」みたいな返事がフランス語で来ていたため、ホテルの人がスケッチブックか何かに私の名前を書いて出迎えてくれるのだと思っていた。

 だが審査と荷物受け取りを済ませてロビーに出てみると、誰もいない。探すまでもないほどがらんとしていた。外でタクシーと一緒に待っているのか? 建物の外にもそれらしき人影は無い。空港のWi-Fiを使ってホテルにメッセージを送ってみる。行き違っているかもしれないと思い空港の中に戻ろうとすると、警備員に止められてタクシーはあっちだと言われてしまった。宿の人と連絡が取れないことを伝えようとするも英語が全く通じない。諦めて示された方向、ロータリーの

向こう側まで行ってみた。

 去年タシケントの空港を出たときは文字通りタクシードライバーや両替を持ちかけてくるおじさんで黒山の人だかりが出来ていたが、犠牲祭直後だからか6人ほどしかいない。それから薄茶のトラ猫1匹。観光客と見るや声をかけてくるのは一緒だ。目的地はどこだと聞かれ、ブッキングドットコムのページを見せながら宿の人と行き違っているかもしれない旨を伝えようとするが、やはりえ通じず。先ほど宿に送ったメッセージに返信がついているか見ようとしたが、空港のWi-Fi範囲外に出てしまっていて確認できない。

 おじさんたちを振り切って空港まで戻るのも面倒になってしまい、最悪の場合宿の人に謝ってお金を払おうと思いタクシーに乗ることにした。値段を聞くと250DH(モロッコディルハム、2018/8/25時点で1DH≒11.7円)。タフな交渉も覚悟していたが、事前に聞いていた深夜の相場価格と一緒だ。拍子抜けするほど良心的だった。

 15分ほど走っただろうか、タクシーが停まり、運転手があれだろうと指をさした。うーん……? 名前が似てるけど違う気がする(同じアラビア語由来の名前だが、アルファベット表記が異なる)。それにブッキングドットコムの内装写真からしてあんな建物じゃないような……。怪訝な顔をするが、運転手は「ほら、地図通りあっちに〇〇(地名)があるはずだから合ってるよ」という感じのこと言う。そんなことを言われても土地勘皆無なのでわからないのだが……。ただフロントが開いているのが見えて、ホテル探しのときに24時間フロントのところが本当に少なかったので、やはりここなのだろうと信じてしまった。

 はい間違いでした。フロントのお兄さんは私のブッキングドットコムのページを見て違うと言った。もちろん予約も入っていない。外を見るとタクシーはとっくに走り去っていた。嘘でしょ……。お兄さんに今いるホテルの場所を見せてもらうと、目的地から1km以上離れている。とりあえずどっちに行けばいいか聞いてみたが、「よくわからない、タクシー捕まえたほうがいいと思う」と言われた。

 礼を言って外に出ると、運良く客を下ろしたばかりのタクシーがいた。地図を見せたところ、宿があるメディナ(植民地以前に作られた旧市街。城壁に囲まれ、外敵を迷わせるために細く入り組んだ路地が続く)の中には入れないが、メディナの入り口までなら連れて行ってくれるという。料金100DH。痛いが深夜なので仕方がない。

 メディナの入り口である門の前で降りる。門の名前が分かればと思ったが、特に表記は見当たらない。街灯も少ない。タクシーの来た道のりから門を仮定して進んでみる。ネットが無いせいでブッキングドットコムの地図を拡大できないので、『地球の歩き方』と照らし合わせながら歩く。と言ってもすぐに地図に載っていなさそうな、人ひとりやっと通れるような路地に当たって見当がつかない。その時、一人の男性に声をかけられた。B系(?)の兄ちゃんという風情でビビったが、英語が話せるようで手を貸してくれるという。地図と住所を見せると付いてくるように言われた。しかし道が分かるわけではないらしい。数メートルごとにたむろしていた人たち(時間のせいか老若は問わないが男性ばかりだ)に聞いては進みの繰り返しだ。B系兄ちゃんも地元の人っぽいが、よくわからないらしい。一応事前に聞いてはいたのだが、アラブ圏の人々の空間認識あるいは地図読みの能力というのは日本に住む人々のそれとかなり異なるらしい。最初のタクシー運転手も悪気があったわけではないのだろう。

 少しずつ進むのを繰り返して、ここじゃない? と言われた。声をかけると中から主人が出てきて、私の顔を見るなり名前を言ってきたので驚いた。どうやら私からの連絡を受けてから迎えに行くつもりで、私がオフラインの間に連絡をくれていたらしい。申し訳ない。B系兄ちゃんはチップの要求もなく"Have a nice trip. Good night"とだけ言って握手して去っていった。いい人だ……。

 甘いミントティーとバタークッキーという、深夜に食べてはいけない最強の組み合わせをご馳走になりながらチェックインをして、シャワーを浴びて寝た。宿の主人はすごく親切な方だが英語は片言のようで、早急にフランス語で自分の要求くらいは伝えられるようにならないとまずいことが分かってきた。とりあえず今日は両替やSIM契約をしてインフラを整えていこうと思う。


f:id:practicewriting:20180825190921j:image

朝ごはん。これに目玉焼きが付いてきた。オレンジジュースが生絞りなのか果肉たっぷりで嬉しい。